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虐げられた人々の抵抗 Ⅰ

ローザは少女時代、多感な娘だった。
なぜ、白人の子どもたちにはスクールバスがあって、自分たちにはないのだろう。
どうして、バスの中で、白人専用席に誰も座っていなくても、自分たちは立たなければならないのだろう。
白人専用の水飲み場と、黒人専用の水飲み場の水の味は違うんだろうか。
なぜ、黒人は白人の言うことに逆らってはいけないんだろう。
自分が生まれた頃からの世の中の「ルール」に対する疑問は尽きなかった。


小学6年生のとき、担任の先生は白人の女性だった。
彼女は黒人の子どもたちを虐げることは絶対にしない、すばらしい教師だった。
白人でも自分たちを普通の人間として扱ってくれる人はいる、それを教えてくれた。
ローザは「自分は尊厳と自尊心を持った一個の人間である」ということを、この先生から学んだ。
はじめから、自分は黒人だからひどい扱いをされても、それが当たり前なんだという定理を死ぬまで疑わずにいれたら、辛くとも、何とかそのまま生きていけたかもしれない。

しかし、ローザは自分が人間であることを自覚してしまった。
自分は尊厳と自尊心を持った人間である。
だからこそ、だからこそ、
なぜ、自分たちはいわれのない差別を受け入れなければならないのか、という苦悩を抱えこむことになった。


それから月日は流れ、42歳になったローザは、生まれ育った町の近くのモンゴメリー市に住んでいた。
ここ、モンゴメリーで走っているバスでは、36ある座席のうち、前方の10席は白人専用席であり、後方の10席は(そう決まっていたわけではなく暗黙の了解として)黒人専用席だった。
そしてその中間の席はどちらも座ってよい席だったが、白人が座れない状況ができたら、黒人は席を白人に渡さなければならなかった。

1955年12月1日の夕方、ローザは仕事を終え、いつものようにバスに乗って帰ろうとしていた。
真ん中のあたりが空席だったのでそこに座った。
なぜ、後ろのほうに、何人も立っている人がいたのに席が空いていたのか、深く考えずに座った。
次の停留所で白人が何人か乗りこんできたため、白人専用席がいっぱいになり、1人の白人が立ったままになっていた。

運転手は、白人が立ち、バス中部の座席に黒人が座っているのを見て、「そこの席を空けてくれ」と言った。
しかし、黒人たちが動かなかったので彼はもう一度、「さっさとその席を空けたほうが身のためだぞ」と言った。
そこでローザ以外の3人の黒人が席を立った。
しかしローザは動かないどころか、空いた窓側の席に座りなおした。

運転手は座ったままでいるローザに、立つのかどうかを尋ねた。
ローザは「いいえ」と答えた。
すると運転手は「お前を逮捕させるぞ」と言った。
「構いませんよ」とローザは答えた。


ローザの自伝にはこう書いてある。

「よく人は、あの日私が席を譲らなかったのは、疲れていたからだと言います。
しかし、それは違います。
私は肉体的には疲れていなかったのです。
もし疲れていたとしても、いつも仕事後に感じる程度の疲れだったにすぎません。
私が当時老人だったようなイメージを抱いている人がいますが、年はとっていませんでした。私は四十二歳だったのです。
違うのです。
私が疲れていたのは、白人のいいなりになることに対してだったのです」
ローザ・パークス 高橋朋子 訳 1999 『ローザ・パークス自伝』 潮出出版   129-130 


警官が二人やってきて、ローザになぜ立たないのかを尋ねた。
ローザは逆に尋ねた。
「あななたたちは皆、どうして私たちをいじめるのですか」
警官は「さあな。だが、規則は規則だ。お前を逮捕する」と言ってローザをパトカーに連行した。

ローザ・パークスは人種隔離法違反で逮捕され、留置所に入れられた。

ローザは夫に電話し、保釈金を払ってもらい、すぐに保釈された。


ローザが逮捕された次の日、周辺の黒人専用の小学校、中学校、高校、黒人の集まるような店やバー、教会に次のようなチラシが配られた。

「1955年12月5日にむけて
また一人の黒人女性が、バスで白人に座席を譲らなかったために逮捕され、牢屋にいれられました。
バスの座席を譲らなかったことで黒人女性が逮捕されたのは、クローデット・コルヴィン以来、これで二度目です。このようなことは止めなければいけません。
黒人にも権利があります。
もし黒人がバスを利用しなければ、バス会社は経営困難になるでしょう。乗客の4分の3は黒人です。
しかし私たちは逮捕され、席が空いていても立っていなければなりません。
このような逮捕をやめさせるために、今何かをしなければ、逮捕は続くでしょう。
次はあなたかもしれません。
あなたの娘さんやお母さんであるかもしれません。
この女性の裁判は月曜日に開かれます。
ですから、この逮捕と裁判に抗議して、すべての黒人のみなさんは、月曜日、バスに乗らないでほしいのです。
月曜日は、職場や町や学校、どこへ行くにしても、バスには乗らないでください。
一日なら学校に行かなくても大丈夫です。
仕事の場合には、タクシーに乗るか、歩いてください。
しかし、子どもも大人も、どうか月曜日は一日、バスには乗らないでください。
月曜日はすべてのバスをボイコットしましょう。」
ジェームズ・M・バーダマン 水谷八也 訳 2007『黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録』 集英社新書72-73


このチラシが3万5千枚も、モンゴメリー周辺に配られたのである。

金曜日、ローザは、他の教会の牧師や指導者が集まる集会に出席し、逮捕されたときのことを説明した。(その中には当時26歳だったキング牧師もいた)
出席した牧師たちは日曜日の礼拝で、この抗議運動について話した。

また、モンゴメリーにある黒人が経営するタクシー会社18社は、タクシーをすべてのバス停で停め、バス料金と同じ10セントを乗車料として取ることに同意した。

月曜日の朝、キング牧師の自宅の窓から、空っぽのバスが通りすぎるのが見えた。
雨が降っているにもかかわらず、人々はバスのボイコットに協力したのだった。
こうして、バスの中での人種差別に対する怒りが噴出したのだった。

AfricanAmericans2.png
(当時のローザ・パークス Wikipediaよりhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E6%B0%91%E6%A8%A9%E9%81%8B%E5%8B%95


バスのボイコットを行うにあたり、この運動を推進するためにモンゴメリー改良協会(MIA)という組織が立ち上がった。
そしてこの組織のリーダーとなったのがキング牧師だった。
キング牧師はMIAの集会において、今こそ立ち上がり行動に移す時だ、と聴衆を奮い立たせ、ボイコットを1日だけでなく、次の日以降も継続していくべきかの是非を問うた。

そこにいたすべての聴衆が起立して賛成し、ボイコットは次の日も、その次の日も、差別が是正されるまで続けられることとなった。

教会は、ボイコット運動のために、寄付金を集めて、何台ものワゴン車を購入しタクシー代わりに利用できるようにした。(それは「走る教会」と呼ばれるようになった)

多くの人にとって、連日、仕事に歩いて行くことは重い負担であった。
そこで、「走る教会」以外でも、車を所有する一般人たちが、黒人を職場に送迎することに協力するようになった。
そして、さらなる利便性のために、送迎システムが作られ、32ケ所の乗り場と乗り換え場ができ、一日に約三万人もの人々がこれを利用した。

黒人たちがバスに乗らなくなったため、モンゴメリーのバス会社は大赤字となり、最終的にバスの運行は停止することになった。

また、黒人は黒人差別を行う店を利用しなくなったため、繁華街の店にも損失が出るようになった。

ボイコット運動は一年以上続いた。

翌年の11月13日、アメリカ合衆国最高裁判所はモンゴメリーのバスの人種隔離は憲法違反であるという黒人たちの訴えを認める判決を下した。

12月20日、アメリカ合衆国最高裁から正式な命令書がモンゴメリーに届き、その翌日、バスのボイコット運動は終了した。

ローザはかつて白人専用の席だった場所に悠々と座っていた。
初めて乗った、人種差別のないバスは本当に快適なものだった。

モンゴメリーの黒人たちは、白人のグループからの度重なる嫌がらせ、脅迫に屈せず、ボイコット運動をやり遂げた。

これをきっかけに、他の都市の黒人たちも、人種隔離されたバスのボイコット運動を始めるようになった。

黒人が公民として平等のな地位を得ることを求める「公民権運動」の幕開けだった。


参考文献

ローザ・パークス 高橋朋子 訳 1999 『ローザ・パークス自伝』 潮出出版  
ジェームズ・M・バーダマン 水谷八也 訳 2007 『黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録』 集英社新書




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